本当は秘密にしたい投資本――書評:なのなの『月41万円の“不労所得”をもらう億リーマンが教える 「爆配当」株投資』

なのなの『月41万円の“不労所得”をもらう億リーマンが教える 「爆配当」株投資』

相互フォロワーの「なのなの」さんが本を出すことは以前から知っていて、Kindleで予約し、買ったものです。

私が読み始める前に、複数のフォロワー賞賛しており、これは早く読まねばと思い、2023年12月28日に、ようやく読み終わりました。


一言で言ってしまえば――「秘密にしたい投資本」です。
タイトルは世にある個人投資家の高配当推しの本で、内容も初心者向けではありますが、個人投資家による凡百の本とはレベルが違います。
日本人が書いた投資本の中で、個人投資家に役立つ度合いで言えば、私が読んだ中では五指に入ります。

どういうところのレベルが高く、どういうところが役に立つのか、ざっと挙げてみましょう。

1.自分の主張について、律儀にデータで論拠を挙げていること
2.それでいてデータ一辺倒ではなく、著者自身の経験に基づく、明日使えるテクニックもちりばめられていること
3.著者自身が勧める投資法が、強烈なリターンを目指すものではなく、手堅く、再現性のあるものであること
4.読者が自分なりの「勝ちパターン」を作る方法まで教えていること
5.高配当投資に留まらない各種の投資情報も簡潔に記載されているうえ、一般的な記述を超えるレベルまでカバーしていること

以上の点について、一つずつ触れてみましょう。

1.自分の主張について、律儀にデータで論拠を挙げていること

この部分については、著書全体に横溢している要素なのですが、一例を挙げます。
2章では「日本株に投資する圧倒的メリット」と題し、日本株への投資をする根拠を上げています。
その中では、まずmyINDEXによる世界全体のPER、PBR、配当利回りを一覧表にしています(1つめのデータ)。
次に、日経マネー氏の個人投資家アンケートで高配当投資が注目されていることを挙げています(2つめのデータ)。
さらに、この後に、32年分のダウ平均と日経平均との比較では、ダウ平均の方が大きく上回っていることを挙げたのち(3つめのデータ)、ここ10年ではほとんど差がないことを挙げ(4つめのデータ)、自らの主張の根拠や、裏付けをきっちりと行っています。
こうしたデータを章ごとにしっかりと挙げ、著者の主張が曖昧な感覚ではなく、マクロなデータに裏付けされていることを示しています。

2.それでいてデータ一辺倒ではなく、著者自身の経験に基づく、明日使えるテクニックもちりばめられていること

例えば、「具体的には、投資対象を配当利回りが4・0%以上の企業に絞る」という著者が使っている購入の基準はすぐにでも真似できるでしょう。
さらに「自分の想定に反して下げる株があった場合、翌営業日に買い戻すことを前提にその株をいったん売却する」というテクニックも単純ながら良い方法だと思います。含み損の銘柄ができたら、私も今年からやってみる予定です。
こうした、即効性のあるテクニックがいくつもあることが嬉しいところです。

3.著者自身が勧める投資法が、強烈なリターンを目指すものではなく、手堅く、再現性のあるものであること

X(Twitter)の株クラの方々には年利50%、いや年利100%超を毎年叩き出すかのような人がいます。そうした人に憧れ、一攫千金を夢見る人はたくさんいますが、著者は、どちらかというと、リスクを小さくして、その上で指数以上のリターンを狙うための方法を説いています。しかも、その方法が、一度きりのものではなく、再現性のあることを目指しています。著者は、高配当で、その中からさらに好業績だったり、高成長だったりする株を探すことや、多くの銘柄を分散して保有することを勧めています。

4.読者が自分なりの「勝ちパターン」を作る方法まで教えていること

著者は「自分の性格やライフスタイル、興味分野に従いながら、それぞれ自分に合った手法で投資を行っていくのがよい」として、自分に合った投資手法を見つけるための方法を著書の中に記載しています(せっかくなのでこの部分は直接本に当たってください)。こうした方法を試したり、後述するアノマリーなどの解説を通じて、高配当株に留まらない、読者一人一人の株の勝ちパターンを作るヒントが本の中にちりばめられています。

5.高配当投資に留まらない各種の投資情報も簡潔に記載されているうえ、一般的な記述を超えるレベルまでカバーしていること

前述したとおり、この本には高配当投資以外の要素に対する記載があります。その白眉は第10章のアノマリー投資について記載した章です。「アノマリーとは、理論的には説明することができないものの、経験的に観測されるマーケットの規則性」です。この章では「セルインメイ」(5月に売れ)について、月ごとの日経平均株価上昇率、アメリカ大統領選挙年を巡るパフォーマンスの変化、干支、曜日、月初月末の相関性、はては金曜ロードショージブリ放映時のアノマリーまで、世間で色々と言われるアノマリーについて幅広く検証をしています。こうしたデータはなかなか調べるには時間が掛かるもので、効果のあるなしにかかわらず、調査を公開したことがありがたいタイプの資料です。
さらに、配当無関連命題や高ROE銘柄のパフォーマンスなど、コーポレートファイナンスと株式投資を繋ぐテーマについても勘所を上手くまとめた解説があり、初心者向けの本としてはかなり高いレベルの内容までカバーされています。

終わりに

一番近い読み味の本を挙げるなら、著者が11章で引用している名著、シーゲルの『株式投資』です。使用するデータの幅広さや高配当を高く評価する姿勢は通底しています。
ただし、なのなのさんのこの本は、即効性や親しみやすさにおいて、『株式投資』に勝ります。

この本の唯一の問題は、この本が評判になりすぎて、あまりにも人口に膾炙し、買い妙味のある高配当株がなくなってしまうことです。
最初に「秘密にしたい投資本」と書いたのは、そのためです。しかし、なのなのさんには売れてもらいたいので、こうして記事を書いたのでした。

初心者の方はとにかく一度読んでみてください。中級者以上の方も、ファンダメンタリストであれば、なにがしかの参考になることは間違いありません!

本当におすすめですよ!

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